「人は祈る時なぜ手を合わせる?」
「お救いくださる神様が掌の中にいるのよ」
世界を巻き込んだ戦時下、獣人たちの間で蔓延する不治の疫病を研究するため、医師ノーマンは国境の中立地帯にある獣人の高級娼館に訪れる。娼婦の霞月は興味を抱き、自らノーマンの被験者となり、ノーマンは彼女の幅広い教養と語学力を買った。
順調に治療薬の研究は進み、近々戦場に戻ることになったノーマンは、しばしの別れを告げ、惜しむ霞月は別れの接吻を贈る。
「まるで小動物の求愛だ」
「女にここまでさせといて、貴方って本当、酷い人」
腹を立てる兎を背に、その場を後にしたノーマン。これが霞月と最後に交わした言葉になるとは、つゆ知らず──。